高周波マグネトロンスパッタ法により、[(Bi_<0.5>La_<0.5>)(Ni_<0.5>Ti_<0.5>)O_3+0.125Bi_2O_3]組成からなる粉末ターゲットを用いて膜厚が10nmの(Bi_<0.5>La_<0.5>)(Ni_<0.5>Ti_<0.5>)O_3(BLNT)結晶核をPt(100)/MgO(100)基板上に600℃で作製した。同一組成のセラミックスターゲットを用いて常温スパッタ法により、先の結晶核上に非晶質膜を作製した。前年度の研究成果に基づき、非晶質BLNT膜の結晶化(HIP)条件についてHIP保持温度及び時間をそれぞれ800℃、1hに固定し、圧力媒体ガスにAr/O_2=80/20の混合ガスを用いて総酸素分圧(P_<02>)が0.02-0.4MPaの範囲で最高の強誘電性を示す至適なP_<02>を検討した。P_<02>=0.1-0.2MPaにおいて半価幅△θ=0.96-0.98°の良好な結晶性とペロブスカイト単相構造もつc軸配向膜を得た。原子間力顕微鏡(AFM)による膜表面モルフォロジー観察の結果、P_<02>の増加に伴い平均自乗表面粗さ(R_<ms>)は減少し、P_<02>=0.02MPaのとき最大のR_<ms>(=44.2nm)を示した。この結果は、低P_<02>下でペロブスカイトマトリックス中に析出した棒状あるいは針状形状を示すチタン酸ビスマス(BIT)粒子の生成による影響を受けていると考えられる。また、低P_<02>下ではペロブスカイト構造内に強固なBi/La-O結合を形成しにくく、その結果層状構造をもつBIT相が安定相として現れたと推察される。誘電特性に関し、室温の比誘電率(ε_r)はP_<02>=0.1-0.2MPaにおいて約90であったが、P_<02>=0.3-0.4MPaにおいて60-70まで減少した。この減少は試料の小さな粒子サイズ(ドメインサイズ)による。強誘電性はP_<02>=0.2MPaの条件でHIP処理した試料において残留分極(P_r=5μC/cm^2)を有するもっとも良好な分極-電界(P-E)ヒステリシスループを観測した。
|