研究概要 |
本年度はTEC,SEMを用い,ベリリウム銅代替合金の有力候補となっているCu-0.2wt%Be-1.2wt%Ni合金並びにCu-2.0wt%Ni-0.5wt%Si合金をベース材とし,前者に0.15wt%Mn,0.15wt%Mg,0.02wt%Crを添加した合金,後者に0.1wt%Co,0.2wt%Fe,0.02wt%Crを添加した合金,さらに両合金に0.2wt%Zr等を添加した合金を作製し,これら添加元素の450℃時効時における強度・導電率への影響を調べ,以下の結果を得た。 1.Cu-Ni-Si合金にMn,Mg,Crを単独添加することで結晶粒が微細化されるとともに,強度が向上する。MnとMgを複合添加した場合,強度は最も高い値を示し,更にCrを添加することで結晶粒がさらに微細化し伸びが向上した。強度向上の原因はδ-Ni_2si析出物の数密度が高くなり,平均析出物間隔が減少したためと説明できる。 2.Cu-Ni-Be合金にFe,Co,Crを単独添加したときFe,Cr添加により伸びが増加し,Co添加により強度が向上する。FeとCoを複合添加した場合,強度は最も高くなり,更にCrを添加することで結晶粒が微細化し伸びが向上した。この強度向上はγ'粒子の体積分率が大きくなり,サイズが小さくなったためと理解できる。 3.Cu-Ni-Be合金のピーク時効,過時効時において降伏応力はオロワン機構により支配される。 4.Cu-Ni-Si合金,Cu-Ni-Be合金にZrを添加すると強度が向上し,結晶粒も微細化した。強度の向上は前者の合金ではδ-Ni_2Si析出物の数密度が大きくなり,平均析出物間隔が減少することによる。後者の合金ではγ'粒子の体積分率が大きくなり,粒子のサイズが小さくなったことで強度が向上したと言える。 次年度はこれらの結果を基に,上記の合金にECAP並びにARBの適用し,さらなる強度向上を試みる。
|