研究概要 |
Cu-2.0wt%Ni-0.5wt%Si合金とCu-1.2wt%Ni-0.2wt%Be合金に0.17wt%Zrを添加した合金をベース材とし,前者に0.15wt%Mnと0.15wt%Mgを添加した合金,後者に0.1wt%Mgを添加した合金を準備した.溶体化処理後のこれら4種類の合金に繰返し重ね接合圧延(ARB)法を適用し,主として強度特性を調べるとともに,単なる圧延だけを行った場合と比較・検討することにより新たに以下の結果を得た. 1. ARB加工と時効処理を併用して作製したCu-Ni-Si-ZrとCu-Ni-Be-Zr合金は,同様の加工熱処理を施した元素添加材より強度が低い.元素添加による強度向上は析出物の数密度が増加し,δ及びγ"析出物の析出物間距離が減少したことに起因する. 2. Mn,Meの元素添加により,Cu-Ni-Si-ZrとCu-Ni-Be-Zr合金の応力緩和特性は向上した.これは,析出物が転位上に優先析出することで,可動転位が減少するためと説明了きる.また,Mg添加による応力緩和特性向上の原因は,可動転位の減少に加え,Mg原子によりコットレル雰囲気が形成されるためであると理解される. 3. ARB加工と時効処理を併用して作製したCu-Ni-Si-Zr系合金は,90%圧延後同様な時効処理を施したこれらの合金と強度レベルは同じであるが,伸びは大きい.強度に差が認められないのは,ARB加工材の転位密度は90%圧延材と比べ低く,これによる強度の低下分が結晶粒微細化による強度の増大分と同じであるためであると理解できる.一方,ARB加工と時効処理併用後のCu-Ni-Be-Zr系合金の強度と伸びは,90%圧延と熱処理を併用したそれらの合金に比べ大きい.これらの合金系では転位密度には差はなく,結晶粒微細化効果によりARB材の強度が高いと考えることができる.
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