ランタン族金属はその特異な化学的性質から多様な材料に用いられている。たとえば、テレビなどの電化製品中の部品や携帯電話中の磁石への利用はよく知られている。地球上には限定された地域で採掘精錬されるが、大変貴重な金属資源となっている。従って、様々な無機系廃棄物から有用な金属を取り出し、化学的な方法で抽出分離する方法の開発が望まれる。本研究では、遠心液-液分配クロマトグラフィーを用いることにし、テフロン(長さ100m)で12本の棒にコイルを巻きつけて偏心状に配置し、そのコイル中で多段階分配を行わせることにした。全体積は約30mLであった。ヘプタン中にビスー2-エチルヘキシルリン酸(BEHPA)を溶解した溶液を固定相とし、移動相にはトリクロロリン酸溶液を用いて13種ランタン族イオンの一斉相互分離を試みた。まず、ランタン族金属イオンの液-液抽出を行って分配比を求め、その結果得られた半抽出pHから、原子番号が隣接する金属イオンの相互分離を予想することができた。次に、3種の軽ランタン族金属イオン混合溶液を試料として実験パラメーターに関する研究を行った。すなわち、クロマトグラフィー相互分離に及ぼす移動相のpHと流速、回転速度の影響について調べた。通常のクロマトグラフィーと同様に、保持体積は分配比に比例し、移動相のpHが高いほど大きくなった。また、分離効率は移動相の流速を小さくすれば高くなることがわかった。回転速度についても調べ、毎分700回転が適当であった。本年度はランタン族金属イオンの分離に関して基礎的な研究を行った。
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