本年度は、昨年度に引き続き核形成に関する研究を継続して行った。Sr(NO_3)_2水溶液中で、包晶関係にある高温相(Sr(NO_3)_2)と低温相(Sr(NO_3)_2・4H_2O)の核形成過程を直接観察記録することにより、以下の結果を得た。 1.低過冷度下では高温相が初相として生成する。 2.低温相は高温相の上に不均一核形成し、たとえ低温相の安定条件下でもあっても初相として核形成することができない。 3.上述の核形成の順序は溶液撹拌速度によらず変わらない。この結果は、核形成後の成長速度が低温相で大きく、かつ撹拌速度の増加とともにその差が大きくなることと著しい対照をなす。 4.以上の結果より、核形成過程においては低温相と高温相の表面エネルギーの差がその速度を決める主要な要因であると結論できる。このため、高温相が低温相で覆われた典型的な包晶組織は、比較的高濃度の限られた条件下でのみ形成されると考えられる。
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