研究概要 |
1.数値計算と小型実験機による性能試験結果を死較し,吸着材デシカントロータにおける総括物質移動係数と諸操作変数の関係を検討した。この結果,空調目的で設定される空気流速,空気条件変化に対する物質移動係数の変化は小さいが,回転数の増加(サイクル時間の減少)に従って物質移動係数は増加し,サイクル時間との関係は浸透説によって説明できることがわかった。 2.ハニカム吸着体を用いて,吸着速度と脱着速度の比較を行った。まず,水蒸気しか存在しない真空中では,空気が存在する大気圧下よりも吸着速度が遅い。真空中では発生した吸着熱が排除されないことに起因するものである。大気中で吸脱着サイクル操作を行い,等温条件で吸着量変化を調べた結果,吸着に比べて脱着が速く,デシカントロータの吸脱着面積比の変更により性能向上が期待できることが示された。また,吸着と再生では総括物質移動係数が異なることは明らかで,それは粒子内拡散係数の温度依存性で説明できると考えている。 3.数値計算を用いて吸着等温線形状が除湿性能に与える影響を検討した。低い相対湿度域では水蒸気吸着量が少なく,ある相対湿度域で急激に吸着量が増加するS字形の吸着等温線に着目した。 (1)相対湿度30%で吸着等温線が立ち上がる吸着材ロータは50℃再生において良好な除湿性能を示す。一方,80℃再生では相対湿度15%付近で吸着等温線が立ち上がるデシカントロータの除湿性能が高い。S字形の水蒸気吸着等温線において,平衡吸着量が急増する相対湿度および立ち上がり形状は極めて重要であることがわかった。 (2)S字形の吸着等温線を示すロータでは大きな吸着推進力が得られるため,空気風速が増加しても吸着帯幅の増加が小さく,従来ロータに比べて除湿性能の低下は小さい。言い換えれば,S字形の吸着等温線が実現できればロータ長さの削減も可能となる。
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