研究概要 |
微粒子の精密ハンドリングのための表面電荷制御法を開発するために,形状の異なる二つの装置を試作した。一つは円柱形であり,粒子を上端から円周に沿うように導入して,下端から円周の流れに沿って排出させた。いわゆる,接線流入・接線流出方式としており,円柱形の帯電装置内で粒子を気流とともに旋回させて,遠心力を用いて側壁に押し付けることにより,粒子と壁の接触効率を高めるものである。しかし,装置内の粒子および気流の速度は下流に行くほど低下するので遠心力は減少し,側壁への粒子の押し付け力も小さくなる。遠心力の低下を防ぐには,装置出口に向かって半径を小さくし,速度の低下分を補う必用があるため,逆円錐台形の帯電制御装置も試作した。装置内面(上下面および側面)には,接触帯電用金属薄板を取り付けた。金属の材質は,汎用性および帯電性を考慮して,銅,真鍮,ステンレス鋼の3種類とした。帯電列は,(正側)真鍮>銅>ステンレス鋼(負側)であり,2種類の金属による帯電制御実験では,真鍮とステンレス鋼を用い,側面を2分割あるいは4分割して,隣り合う金属の材質が異なるように配置した。上下面には,側面に取り付けた金属に合わせて,扇形に分割して金属薄板を取り付けた。装置内のすべての金属薄板を接地した。装置の入口および出口に吸引式ファラデーケージを取り付けて比電荷を測定した。球形無機酸化物微粒子(質量基準中位径10μm)を用いて実験を行った結果,遠心効果を有効に利用できる逆円錐台形の方が帯電装置として適していることを確かめた。帯電効率は90%であり,2基直列に接続すると98〜99%の良好な結果が得られた。2種類の金属板の表面積比を変えて粒子の帯電制御特性を評価した結果,粒子と各金属板とによって決まる平衡比電荷を上下限として,その間の所望の値に制御できた。また,理論計算によって粒子の比電荷を推算することが可能になった。
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