現在の石油に依存した社会から脱却し持続型社会に移行するために、環境に多大の負荷を与えている石油由来のプラスチックをバイオマス廃棄物を原料として製造される生分解性プラスチックに代替することが望まれている。木質廃棄物、稲わら、麦わらから製造されるリグノフェノールはそのような生分解性プラスチックとして有望視されている。機能性プラスチックとしてイオン交換樹脂、キレート樹脂、イオン交換膜等の分離機能材料があり、これらも生分解性プラスチックに代替されることが望まれる。このような最近の社会的要望に対応すべく、本研究では新規の生分解性プラスチックであるリグノフェノールを高度な分離機能材料として利活用するために様々な金属イオンに対して高い親和性を有する官能基を固定化した様々な化学修飾リグノフェノールを調製し、問題の金属イオンに対する吸着挙動を評価する。具体的には電子材料や燃料電池の製造に欠かせない金や白金等の貴金属に対して高い親和性を有する1級及び2級アミノ基や4級アンモニウムの官能基を化学修飾したリグノフェノールの吸着剤を調製し、貴金属に対する吸着挙動の評価を行う。また市販のキレート樹脂に多く使用されているイミノ2酢酸やオキシンの官能基を化学修飾したリグノフェノールの吸着剤も調製し、様々な金属イオンに対する吸着挙動の評価を行い、既存のキレート樹脂のそれと比較し、リグノフェノールの吸着剤の優位性を検証する。 上記の目標の下に本年度の研究においてはジメチルアミンの官能基を固定化した化学修飾リグノフェノールを調製し、その金属吸着特性の評価を行った。その結果リグノフェノールでは吸着が見られなかった白金やパラジウムも広範な塩酸濃度範囲において吸着が見られ、その最大吸着容量はそれぞれ0.62および0.64mol/kgと評価され、既存のイオン交換樹脂のそれとほぼ同等の値となった。さらに金の最大吸着量はリグノフェノールの場合が1.98mol/kgであったのにジメチルアミンの官能基を固定化することにより7.25mol/kgにまで向上した。
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