前年度に引き続き、噴霧乳化法による調製されるエマルションの液滴径分布に影響を及ぼすプロセス因子の抽出・定量化について更に検討した。実験は、水相にイオン交換水、油相にサラダ油・シリコーン油・ドデカン・ヘキサン等を用いて検討した。操作変数は空気流量と空気圧力、水相・油相の液流量である。そのほかにノズル口径、液物性として粘度が平均粒径に及ぼす影響について実験を行った。得られたエマルションのザウター平均径で数μmであり、ワンパスですべての液滴をナノサイズにすることは難しいが、このエマルションを再度噴霧乳化することで液滴径がさらに小さくなることを確認した。また、ノズル口径で無次元化した平均液滴径と操作変数および液物性を用いた相関を試み、Z数(慣性力、粘性力、表面張力を用いた無次元数)と油相粘度を用いた相関式を得た。相関式により得られた計算値と実測値は、20%以内の誤差で一致した。調製したエマルションの安定性について、ゼータ電位の測定から検討したが、調製条件による有意のある差は見られなかった。高粘性の油相を分散させるためには、粘性を下げるために高温で操作することが必要となる。そこで、ノズル部分にヒーターを設置し、温度がエマルションの液滴径に及ぼす影響について検討したところ、同じ空気流量(質量流量計の測定値)であれば、高温の方がエマルション滴径が小さくなることがわかった。これは、噴霧部での加熱による空気の膨張によりノズル先端から噴出する空気流の流速が速くなるためと考えられ、液流量が小さくなると液滴径が減少するという温度一定条件における傾向と一致した。
|