昨年度までに構築した「故障を含むモデル」、「耐故障制御技術」、「システム管理技術」の3つについてそれぞれの要素技術を統合化するための方法について研究を進めた。故障発生時の対処方法については、ある程度、個別の異常毎に考えざるを得ない面もあると思われるが、可能な限りシステマティックに記述できるように、故障の構造と対処方法についての関係を運転モードや機能の観点から整理した。一方、故障診断の結果を用いて、正常時のモデルと故障時のモデルを調整し、どのような制御操作を行うかを各時刻で決定するためには、「システム管理技術」が欠かせない。そこで、適切なモデルと適切な制御系を融合する方法について詳細に検討し、システムの運転モードに着目した管理技術をシステム工学的に整理した。最後に、これまでの研究の結果として得られた耐故障性能を有するプロセス制御系の構築手法をソフトウェアとして実装した。さらに、簡単な3タンクプロセスを対象としたシミュレータを構築し、バルブの漏れや固着センサーの故障などのさまざまな故障を想定した場合の耐故障制御システムの性能についてケーススタディを行い、開発した手法の有効性を検証した。その結果、本研究で提案する手法を適用して耐故障性能を有する制御系を予め構築しておくことによって、故障の発生時にも可能な限り適切な制御を継続して行うことができ、故障時の影響を最小限にするプロセス制御系を提供できることが示された。
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