平成19年度は、フィルムの塑性変形を熱伝導、フィルムの結晶方向の変化を含めた形で表現するための有限要素法によるモデルの開発を行った。モデル表現を求めた段階で、まだ実装にいたっておらず、残念ながら、外部発表にいたっていない。並列計算のための計算機環境を、平成19年度に整えることができたので、平成20年度は、コンピュータでの実装を行う予定である。外部発表に到らなかったので、海外旅費を予算に計上していたが、その経費を計算機環境の充実にむけた。並列計算も可能になることから、フィルムの延伸加工の精密なシミュレーションが可能になると期待している。 平成19年度は、簡便なモデルを利用してではあるが、製造ラインの最終段階で、幅方向に結晶の並び、厚さが均一になるための製造ラインの入り口でのフィルム厚の分布、延伸領域での温度分布のつけ方について検討した。シミュレーションにとっては、境界条件と各メッシュでのフィルム特性のパラメータの調整として表現される。シミュレーションにより、加工条件の不均一な分布を設計できるようになるが、実際のヒーター出力などの操作量に対応させるには、まだまだ調整パラメータは多く存在するので、その調整方法も平成20年度の課題である。 このモデルを用いて、操作により引き起こされる計測点と操作点の対応のずれを、ウエーブレット変換により解析することにより、現場の装置で、すでに実装しているウエーブレット変換フィルターによる管理方法も見直すことができると考えている。 今年度は、詳細なモデルが得られないという前提で、制御を行う方法論についても、検討した。実装置から操業データが得られる状態で、制御性能を改善する方法として、モデリングを介することなく制御の調整を行うVRFTを非線形システムに拡張する理論を開発した。この理論の、フィルム製造プロセスへの適用も平成20年度の課題となる。
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