固体塩基触媒としてのMgOについて、表面の耐水性および耐CO_2性を向上させる目的で、酸・塩基性質をあまり示さず、水に対して親和性のない酸化物でのMgO表面の修飾を行った。平成19年度は、MgOをAl_2O_3で修飾すると不溶性が増加し、耐水性の向上が見られることを明らかにした。平成20年度は、Al_2O_3でのMgOの修飾を詳細に検討し、アルコキシドを酢酸エチルなどの無極性溶媒に溶解し、水酸化物の表面の酸・塩基性質を利用してアルコキシドを分解するという合成法を開発した。 平成21年度は、表面のAlの状態を、X線吸収スペクトル(XANES)のプロファイルから明らかにした。結果として、MgO表面に結合したAlは、MgOの結晶構造の影響を強く受け、MgOの岩塩型構造を反影した八面体構造であり、Alの蓄積量が増加するに従って、アルミナ本来の四面体構造となることが分かった。 塩基性をさらに向上する目的で、MgOを塩基性の強いCaOに置き換え、アルミナ被覆CaOを合成し、触媒性能を比較した。その結果、アルミナ被覆CaOはアルミナ被覆MgOと同様に、耐水性、耐CO2性に優れ、かつアルミナ被覆MgOより高活性であることが明らかとなった。 アルミナ被覆MgOは塩基強度が不十分で、バイオディーゼル生成に関してはほとんど活性を示さなかった。これに対し、合成したアルミナ被覆CaOは、バイオディーゼル生成に高活性を示し、有用な固体塩基触媒であることが示された。しかしながら、高活性である分、空気中での使用に限界があることから、さらに耐水性、耐CO_2性を高める試みが必要であると思われる。
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