本研究では、実験モデル動物として注目されている小型魚類のゼブラフィッシュ(Daniorerio)にC. elegans由来のfat-1遺伝子を過剰発現させることで生体内における脂質代謝を改変し、魚類による世界で初めてのn-3系高度不飽和脂肪酸の生産系の創製を目指した。 最終年度となる今年度は、ゼブラフィッシュ全身細胞で発現するベクターpXIに線虫由来Fat-1および蛍光タンパク質(GFP)遺伝子をタンデムに連結し、それを導入したゼブラフィッシュ発現個体の作出に成功した。さらに、構築したプラスミドをゼブラフィッシュ受精卵にマイクロインジェクションして蛍光タンパク質の発現を蛍光顕微鏡で観察した。その結果、ゼブラフィッシュ初期胚において構築したプラスミドベクターによる蛍光タンパク質発現個体を作出することに成功した。さらに、脂肪酸鎖伸長酵素(FAE)遺伝子についても上記と同様のコンストラクトを作製し、トランスジェニック個体が作製できた。また、Fat-1導入個体を用いて、ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸組成を分析した。その結果、野生型個体と比べて、Fat-1遺伝子導入個体は短鎖飽和脂肪酸が減少しており、また同時にn-3系高度不飽和脂肪酸が上昇している傾向が見られた。今後は、Fat-1遺伝子導入個体の成魚における臓器別や雌雄別でのn-3系高度不飽和脂肪酸の解析を行うとともに、FAE遺伝子導入個体との交雑系統を作出することで、効率的なn-3系高度不飽和脂肪酸の生産を目指す予定である。
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