本研究では、生体の免疫システムにおいて重要な働きをしている抗原提示細胞に着目し、T細胞を刺激して免疫機能を強化する複合脂質膜を創製してがん治療へ応用することを目的とした。抗原提示機能を有する複合脂質膜は、リン脂質と非イオン性ミセル界面活性剤からなる複合脂質膜(ハイブリッドリポソーム)に、がん抗原となるムチンMUC-1ペプチドとT細胞活性化の副シグナルを発するB7-1膜タンパクを組み込んだものである。そこで、まず、B7-1膜タンパクを組換えタンパク質として調製することを試みた。B7-1遺伝子の供与体として、B7-1膜タンパクの発現が確認されているマウスBリンパ腫瘍細胞(A20細胞)を用いた。A20細胞2×10^5 cells/mLをRPMI1640 培地(10%FBS、0.05mM2-メルカプトエタノール)に播種し、37℃、5%CO_2のインキュベータ内で培養した。培養A20細胞1×10^6 cellsからのトータルRNAの抽出では、RNA収量は4.8〜8.9μgであり、OD_<260>/OD_<280>>1.8の純度の高いRNAサンプルが得られたことを確認した。得られたトータルRNAを用い、制限酵素(Kpn IとXhoI)の認識配列(ggtaccとctcgag)をもつプライマーで、B7-1のシグナルペプチドと膜タンパクの翻訳領域(921bp)のRT-PCRを行った。PCR産物について、2%アガロース電気泳動を行ったところ、930bp付近にラダーが観測され、目的のmB7-1cDNA(933bp)の存在が示唆された。得られたmB7-1cDNAを用いて組換えB7-1膜タンパクを調製し、複合脂質膜に組み込むことで、免疫担当細胞に作用して腫瘍免疫を強化する新しい強力ながん治療薬の開発が期待できる。
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