平成20年度は、合成が終了した蛍光分子プローブの性能評価を行った。合成が終了した分子プローブの特性評価として、まず緩衝液中で、蛍光分子プローブとウシ血清アルブミン(BSA)を混合した後、吸収スペクトルと蛍光スペクトルを測定した。その結果、蛍光分子プローブ単独では蛍光を発しないが、BSAと複合体を形成することによって近赤外領域近傍に蛍光を発し、蛍光強度の大幅な増加が観察された。次に、BSAと蛍光分子プローブの複合体が、タンパク質以外の妨害物質にどの程度影響を受けるかを確認した。妨害物質として、無機塩、還元剤、界面活性剤、核酸、糖、有機溶媒を使用し、これらの妨害物質を、複合体に過剰量添加した。その結果、蛍光強度はほとんど変化しなかったことから、開発した蛍光分子プローブとBSAとの複合体は非常に安定であることが示唆された。また、BSA以外のタンパク質にラベル化した場合にも、BSAと同様、複合体を形成することによって強い蛍光を発することを確認し、タンパク質の構造の違いに依存することなく、性能を発揮していることを確認した。さらに、二次元電気泳動によって分離されたマウスの脳由来のタンパク質混合物と、開発した新規蛍光分子プローブをゲル中で反応させたところ、先の結果と同様、複合体を形成することによって蛍光を発し、明瞭なタンパク質スポットを確認することが出来た。しかも、市販品よりも高感度かつ簡易的に扱うことが出来る分子プローブであることが実証された。
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