研究概要 |
本研究は、高精度遷移予測法の確立,層流維持制御・乱流制御技術の開発,乱流の数値計算モデルの構築等に直結する超音速境界層の乱流遷移機構を解明し,具体的な遷移制御法を創案することを目的としている.平成19年度は主に下記の2点について研究を行った. 1.定量化シュリーレン法の校正法の確立:密度勾配場を非接触で計測可能な定量化シュリーレン法を超音速境界層遷移の計測に適用するため、平行光束を一定角度だけ一様に屈折させる光学ガラス基盤を用いてシュリーレン光学系を校正し、屈折角計測上の誤差の程度を明らかにした.また、この光学ガラスを用いた光学系の再現性を確認する方法について、その精度と有効性を検討した.さらに、校正された光学系を用いて、流れ場が容易に推定できるPrandtl-Meyer流と超音速乱流塊界層の密度勾配分布を計測し、数値計算結果やピトー管による計測結果と比較を行い、その精度と計測上の問題点を明らかにした. 2.超音速境界層の乱流遷移を支配する撹乱の解明:矩形断面超音速風洞のノズル壁境界層の乱流遷移を引き起こすことが実験により示唆されている矩形断面超音速風洞角部流れを数値計算によって調べた.その結果、曲率中心方向に向かう圧力勾配により側壁境界層内に2次流れが生じ、それが角をまわることによって縦渦が形成されること、この縦渦は低速ストリークを形成するとともに成長してその近傍に新たな縦渦を生成すること,この縦渦はその発生位置や空間スケールが実験で観察された結果とよく一致することを明らかにした.また、得られた境界層分布をもとに横流れ不安定について安定性解析を行い、実験で観察されるストリーク構造の空間スケールが解析結果とほぼ一致することを確認した.これらの結果は、今回調べた超音速境界層遷移は、亜音速境界層の場合と同様,低速ストリークと縦渦に支配される現象であることを強く示唆している.
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