研究概要 |
本研究は,高精度遷移予測法の確立,層流維持制御・乱流制御技術の開発,乱流の数値計算モデルの構築等に直結する超音速境界層の乱流遷移機構を解明し,具体的な遷移制御法を創案することを目的としている. 平成20年度は,まず,平成19年度に行った定量化シュリーレン法の校正法の確立に関する研究の成果を論文にまとめて学術雑誌に投稿し,3編について平成21年度発行の雑誌に掲載が決定している.また,平行光束を一定角度だけ一様に屈折させる光学ガラス基盤を用いて光学系を校正することで,風洞通風時に生じる側壁ガラス歪みがシュリーレン光学系を用いた定量計測上問題となることを明らかにした. 次に,校正されたシュリーレン光学系とピトー管により超音速境界層の乱流遷移過程を計測し,遷移過程の平均流を密度勾配分布で示して,遷移開始時に壁近傍の密度勾配が特徴的に増すこと,平均密度勾配分布の変化に伴って境界層外層の流体を壁近傍に,壁近傍流体を外層に運ぶ速度変動が生じていること,このような輸送を担う撹乱として,乱流境界層中で従来から注目されている組織構造に酷似した斜めに傾いた渦構造が観察されることを明らかにした.さらに,境界層遷移過程における渦度撹乱を瞬間シュリーレン画像から調べ,壁から立ち上がり流れ方向に30゜〜70゜傾いた渦構造が遷移初期段階から集団として現れ始め,これが境界層を埋め尽くすと発達した乱流境界層となること,その高さや間隔の平均は境界層厚さのスケールを有し,渦構造の高さの累積度数分布,すなわち,高さに着目した渦構造の存在確率分布は,乱流に近づくにつれて境界層外層の平均密度勾配分布と相似になること明らかにして,注目した斜め渦構造が境界層平均分布を支配し超音速境界層の遷移機構として中心的な役割を果たす非線形撹乱であるとの結論を得た.
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