研究概要 |
本研究は,高精度遷移予測法の確立,層流維持制御・乱流制御技術の開発,乱流の数値計算モデルの構築等に直結する超音速境界層の乱流遷移機構を解明し,具体的な遷移制御法を創案することを目的としている. 平成21年度は,まず,昨年度までに行った研究の成果を論文にまとめ,学術雑誌に投稿し,掲載された. 次に,後退角を有する超音速機翼境界層の乱流遷移に及ぼす影響が無視できない横流れ横流れ不安定による乱流遷移機構について調べた.超音速ノズルの加速部における流れは,主流に向心力を与える圧力勾配がノズル壁の曲率中心方向に存在し,それが側壁境界層内の低速流体にも印加されるため,圧力勾配の方向に2次流れ(横流れ)が生じる.この超音速ノズル内流れの直接数値計算を行い,2次流れによって壁近傍に流れ方向の渦度をもつ流体の層が形成され,これが矩形断面の角部をまわるとともに集中して縦渦群が形成されること,縦渦群を伴う不安定な流れの発生位置や空間スケールは実験で観察した結果と一致し,遷移の撹乱源となることを明らかにした。境界層内に生じた2次流れの変曲点に起因する横流れ不安定により,縦渦列とそれに伴うストリーク構造が生まれ,このストリークの不安定性によって壁乱流特有の撹乱が成長して乱流に遷移する一連の撹乱増幅過程をシュリーレン法による可視化で捉えた.また,超音速境界層の遷移過程においても乱流斑点が形成されることをシュリーレン法による可視化で捉えることに成功し,壁近傍のストリーク構造の特徴から判断して,それが亜音速境界層の遷移過程であらわれるものと類似であることを初めて明らかにした.さらに,横流れ不安定によるストリーク構造の崩壊や乱流斑点の発達から乱流遷移する位置が非圧縮流の場合の横流れレイノルズ数に基づく遷移レイノルズ数に対応することを確認し,横流れ不安定による乱流遷移の下限レイノルズ数を明らかにした.
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