研究概要 |
衛星本体や衛星の搭載部品が持つ磁気の帯磁は、地球磁揚との相互作用力によって衛星姿勢を変化させたり搭載機器に電磁気的影響を与える。そのため搭載部品の帯磁量を打ち上げ前に計測し、飛翔体として適合するかどうかの電磁環境適合性(EMC)試験を実施し、大きな帯磁量を持つ部品は消磁するなどの対策をとっている。本研究では、部品の帯磁量を分解能0.001[Am2]で短時間で計測できる磁気モーメント計測装置を開発、製作して磁気シールドルームなどでの精密測定を行なってきたが、さらに測定精度は落ちるが簡便で実用的なポータブル式磁気モーメント計測装置を開発し、小型衛星搭載部品や単体の磁気モーメント測定を行なった。 JAXAの小型観測衛星「れいめい」の搭載機器の残留磁気モーメントを調べた後,実験データの解析検証を行い,消磁対策を施した。この結果,対策前0.30Am^2あった衛星全体の残留磁気モーメントを設計要求値である0.1Am^2以下に低減できた。さらに近年活発な大学小型衛星の帯磁量を計測する要望が大きくなっており、東京工業大学が開発している衛星の機器や衛星全体の磁気モーメント計測を行い、目標とする残留磁気量が0.01〜0.02Am^2以下に低減できたことを確認した。また、東海大学がソラン株式会社と共同で打上げ予定の「かぶやき」衛星の搭載機器の残留磁気モーメントを計測するため、ポータブル磁気モーメント計測装置を用いたフライト品の帯磁量を計測している。
|