研究実績は次の2点である。その概要を以下に示す。 1.膜揚力面の空力特性(インフレータブル膜翼の変形が空力特性に及ぼす影響) 炭素繊維織物を基布とした膜材を用いたインフレータブル膜翼と比較のために剛体の翼との2体の3次元風洞模型を制作し、航空機会社の2mX2mの測定部を持つ風洞を借用して風洞試験を実施した。試験結果は2体の模型の比較と更にCFD解析結果との比較をとして評価した。揚力系のデータは、ほぼ予想通りの結果であった。抵抗系のデータは計測装置の不具合で試験の再現性がなく、膜模型と剛模型との定量的に明確な分析はできなかった。今後、計測装置等の改善を行って再試験が必要である。また、CFD解析との比較においても、解析した膜変形が模型の変形と一致していないため、比較評価結果に疑問が残る。現在、膜変形解析を精度を上げて実施しており、次年度の風洞試験模型に反映する予定である。 2.膜翼の破壊特性試験 上記風洞試験終了後、インフレータブル膜翼模型を用いて、Cut Slit引裂き試験(ギロチン試験)を行った。予想に反して、膜につけた切り欠きが瞬間的に広がることはなく、全体破壊は起こらなかった。これは、膜材として軽量化の観点から非常に優れた特性であるので、試験片を作成して追加試験を行った。結果は、上々、非常に安定した破壊特性を持つことを確認した。このことは、研究中のインフレータブル膜構造を安全率2で設計できることを意味し、一般の膜構造で安全率5を使用する場合に比べ大幅な軽量化ができる。
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