(1)膜揚力面の空力特性(インフレータブル膜翼の変形が空力特性に及ぼす影響) 膜変形解析で得られた結果を基に0.5mサイズの3次元剛体翼風洞模型を製作し、航空機会社の2mX2mの測定部を持つ風洞を借用して風洞試験を実施した。その結果、膜変形は揚力減少につながるものの、3次元円環翼の場合は翼上部と下部の干渉あるため全体の揚力減少はほとんどなく、また、抗力増加も大きくないことが明らかになった。 (2)膜翼の破壊特性研究 昨年、膜材に切り欠きを付けた試験片を用いて残留強度試験を行い、その結果から膜材が瞬間破裂を起こすことがなく安全率2を設計に用いることが可能で、瞬間破裂が起こる場合にFARで要求されている安全率5で設計する時に比べ大幅な軽量化ができることを示した。ただし、荷重増加に伴う亀裂の拡大モードが予想と違っていたので、今年度解析を行って妥当性を確認した。確認は構造解析ソフトMSC.Marcを用いて大変形非線形解析にて行った。縦糸と横糸で構成されている膜材独特の破壊モードでオープン・マウス形に拡大が進むことが解析で分かり実験結果と合致した。 大きい幕を作るには幕を縫合することが必要になる。膜材の縫合強度をアラミド繊維で縫い合わせた試験片を作成して実験的に求めた。縫い合わせ糸の本数が1本、2本、3本までは縫合強度は順調に増加するが、2本+絡め糸及び3本+絡め糸の場合は3本(絡め糸なし)の時と縫合強度はほぼ同じで、絡め糸による強度増加はない。これは膜材を構成する炭素繊維間の伸びが大きくなり力を分担できなくなるためである。アラミド繊維3本で安全率2の場合の荷重に耐えることができ、絡め糸による強度増加を期待しなくても設計上問題ないことが分かった。 インフレータブル翼構造の大たわみをMarcの非線形解析にて行った。膜材のヤング率Eを1/1000倍に板厚tを10倍にして、膜の曲げ剛性ET^3/12を合わせ面内剛性Etを1/100にすると膜の大たわみの変形が実際の変形に合ってくる事が分かった。
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