イオンエンジンは、エンジンの放電室内にプラズマを生成し、その中のイオンを静電グリッドで加速し推力を発生するもので、イオン加速の物理的なメカニズムが明確であり、高比推力、高推進剤利用率などの特長がある。マイクロ波放電型イオンエンジンは、プラズマ生成にマイクロ波放電を利用するもので、永久磁石で背景磁場を形成した放電室にマイクロ波を導入しプラズマを生成する簡単な構造である。すなわち、電源構成も含めたエンジンのスケールダウンが容易であるという利点も有している。近年、小型人工衛星が盛んに打ち上げられており、将来的には、小型人工衛星の連携によるミッション遂行が、打ち上げリスクの低減や開発期間の短縮によるコスト削減の観点から検討されている。マイクロ波放電型イオンエンジンは、その有する利点から、小型人工衛星の姿勢制御や駆動装置として必要となる小型推進機の有力な選択肢の一つになることが考えられる。 本研究グループでは、これまでにイオン引出しグリッド径10cmおよび2.5cm級のマイクロ波放電型のイオンエンジンの研究開発を行っており、2.5cm級は既に高い水準の性能を有している。今後の小型宇宙推進機に要求される推力等の性能を考えた場合、10cmから2.5cmの間における推進機の開発事例が更に必要である。本年度は、3cmおよび5cm級のマイクロ波放電型イオンエンジンの開発を進め以下の実績を得ている。 (1)3cmおよび5cm級のマイクロ波放電型イオンエンジンの設計、製作を行った。 (2)放電室内部の磁場配意の計測を行った。 (3)製作したイオンエンジンにマイクロ波を導入し、イオンエンジンの放電実験を実施した。 以上の内容をまとめ、性能評価結果およびイオンエンジン最適設計についてまとめる予定である。
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