研究概要 |
まず、2次元翼型まわりの粘性流れ計算法として、境界層の積分型解法のコンピュータプログラムを作成した。境界層の積分型解法においては、境界層外端の流速分布が必要であるので、九州大学で開発したパネル法SQCMを使用した。Abbott著のTheory of Wing Sectionsに示されている幾つかの翼型の抗力係数の実験結果と比較して、作成した粘性流れ計算法の妥当性を確認した。 次に、翼厚分布をNACA66、キャンパー形状をNACA a=0.8Mean Lineとした基本翼型について、迎角、最大翼厚およびレイノルズ数を固定して最大キャンパーの値をランダムに変化させ、粘性流れ計算法によって抗力係数を求めて学習データと。した。このとき、粘性計算の前段階としてポテンシャル計算も行い、揚力係数も求めておいた。学習データの個数は2,000個とした。そして、最大キャンパーと揚力係数を入力、抗力係数を出力とするニューラルネットワークのコンピュータプログラムを作成した。なお、本研究においては誤差逆伝播法を採用した。 2,000個の学習データでニューラルネットの学習を行い、結合荷重を求めた。構築されたニューラルネットワークの妥当性を確認するために、最大キャンパーの値をランダムに変化させ、再度2,000個の翼型を生成し、上記と同様に揚力係数および抗力係数を求めておいた。一方、学習によって得られた結合荷重を用いて、再度生成した2,000個の翼型の最大キャンパーおよび揚力係数を入力として抗力係数を求めた。両方の抗力係数を比較したところ良く一致しており、ここで構築したニューラルネットの妥当性が確認できた。 結合荷重さえ求めておけば、抗力係数は瞬時に求まるため、プロペラ設計支援ツールのプロペラ性能評価計算法と組み合わせても計算時間の増大は招かず、粘性の影響まで考慮した信頼性の高いツールとなることが期待できる。
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