富山商船高等専門学校の総トン数15トンの実習船艇「さざなみ」において、環日本海環境協力センター、富山大学等との共同研究により、毎月一回の海洋環境調査を行っている。ここでは、富山湾に定めた9定点により、気象、海象、水質等の現地調査を実施している。この定点は、おおよそ、魚津から氷見に引いた線から南方に定めている。そこで、この調査においては、神通川、富山新港、小矢部川等から、海へ流入した河川水が、海面にどのような広がりを行っているか把握するのが重要となる。そこで、海潮流の定性的な把握には、「さざなみ」にADCPを設置することが適当である。この小型船舶用ADCPは、航走中の船舶に搭載して海潮流の流向及び流速を測定することができる。ここで、センサー部を水面に挿入固定するために、船体の外舷にフィットする金属性の取り付け金具を作成する必要がる。この取り付け位置はセンサーから照射する超音波ビームが船体による影響を受けない位置にある必要がある。また、船舶の航走により生じる気泡の影響が極力小さい位置にある必要がある。そこで、今年度においては、まず、この観測に最適なADCPを調査し、RD Instruments社のワークホースADCPを選定した。そして、これを、「さざなみ」に仮設置し、実船での動作試験を行った。結果として、以下の事項が判明した。 (1)仮設置の治具にて、船速が約4ノットまでの計測が可能である。 (2)上記において、音響や振動による、測定への影響も無く、内臓の磁器コンパスも正常に動作している。 (3)水深が約100mまでは、ボットムトラッキングモードによる高精度の測定が可能である(U字航行試験において、一定の流向流速が観測される。)。 次の段階として、「さざなみ」装着用の正規の金属製治具の作成を行った。これにより、「さざなみ」におけるADCP計測のシステム化が完成した。
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