富山商船高等専門学校の総トン数15トンの実習船艇「さざなみ」において、環日本海環境協力センター、富山大学等との共同研究により、毎月一回の海洋環境調査を行っている。ここでは、富山湾に定めた9定点により、気象、海象、水質等の現地調査を実施している。この定点は、おおよそ、魚津から氷見に引いた線から南方に定めている。そこで、この調査においては、神通川、富山新港、小矢部川等から、海へ流入した河川水が、海面にどのような広がりを行っているか把握するのが重要となる。そこで、海潮流の定性的な把握には、「さざなみ」にADCPを設置することが適当である。この小型船舶用ADCPは、航走中の船舶に搭載して海潮流の流向及び流速を測定することができる。2008年度においては、RD Instruments社のワークホースADCPを選定し、このシステム化を行った。2009年8月の観測航海より、全観測点におけるADCP計測を開始した。基本的には、全観測箇所の観測停船時にデータ収集を行っている。これにより、湾内全体の流れの状況を把握することができる。また、特に河口近辺での流動メカニズムを探るために、小矢部河口付近での計測を重点的に行った。このエリアは、小矢部川と庄川の河川水が多く流入し、また海底谷(あいがめ)が直近まで食い込む、複雑な海底地形となっている。これらの結果の流速の深度分布を見ると、全体的に流速が約0.1〜0.2m/s以下と非常に弱いことが分かる。そして、流向の深度分布を見ると、場所と深度により、流向が大きく異なることが分かる。例えば、水深が急激に変化する部分では、低部に河を遡る反流が確認できる。こうしたデータに対して、数値シミュレーションでの実証を行う。これにより、富山湾全体の流れの把握につなげる。
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