重金属汚染土壌を中性領域で処理する場合、あるいは重金属を強く収着した細粒汚染土壌を浄化するためには、重金属と強い反応性を示すキレート剤等を使用する必要がある。しかし、重金属と強い反応性を示すキレート剤の多くは土壌に強く吸着し、しかも微生物による分解性が小さいことから、浄化後に土壌を埋め戻した場合、キレート剤が長期にわたって土壌中に残留し、環境への悪影響が懸念される。そこで本年度は土壌を中性領域で処理できしかも土壌中に長期にわたって残留しない生分解性キレート剤並びに生分解性界面活性剤(バイオサーファクタント)の重金属浄化効果について、抽出実験と動電学的浄化処理実験を適用して検討した。その結果、生分解性キレート剤である[S、S]ーエチレンジアミンコハク酸(EDDS)が中性領域でPbおよびCdの浄化に非常に有効であることを抽出実験より明らかにした。また、動電学的実験よりPbおよびCdの浄化において、EDDS濃度および印加電圧の増加は浄化を促進すること、さらに、印加電圧10V~20V(50V/m~100V/m)程度の範囲では印加電圧の影響よりもEDDS濃度の影響の方が強いことが明らかにした。また、バイオサーファクタントを利用した研究では、バイオサーファクタントとしてラムノリピッドおよびサポニンを使用して検討を実施した。その結果、ラムノリピッドは、細粒汚染土壌からのPbおよびCdの除去に効果的でないことが明らかになった。サポニンは、細粒汚染土壌からのPbの除去には効果的でないが、Cdの除去には有効でることが分かった。また、低濃度のサポニンを用いることで中性領域からCdを短時間で迅速に除去することが可能であった。さらに、これまでの研究成果を総合して、環境に優しい原位置動電土壌浄化システムの構築を行った。
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