本研究は、懸濁物質(SS: suspended sediment)の多い水域の水質情報を、衛星に搭載された光学センサーにより得られる分光画像を用いて分離抽出する技術を開発することを主目的としている。研究対象水域として、福井県北に位置する富栄養化の進んだ北潟湖と若狭湾内の小湾であり養殖業が盛んな小浜湾を設定している。 北潟湖の水質諸量を衛星分光画像を用いて計測する手法の開発に向けて、北潟湖水(14ヶ所で採水)および湖底の泥を使った泥水の室内分光実験を行った。その結果、北潟湖水に含まれる物質の主成分は泥(SS)と植物プランクトンを含む植物(葉緑素(クロロフィルa)を体内に含有するもの)であることが明らかになった。一方、小浜湾に対しても同様に海水(14ヶ所で採水)と海底の泥(3ヶ所)に対し分光実験を行った。その結果、小浜湾の海水の主成分は、泥と植物プランクトンであること、また場所によってはそれ以外の成分が存在することも明らかになった。これらの結果から、各水質成分の分光反射率の線形和と各成分間の相互作用項により湖水あるいは海水の分光反射率(R(λ))が記述されることが明らかになった。つまり、R(λ)=C1X1(λ)+C2X2(λ)+C3X3(λ)+…+F(λ)である。ここに、Xi(λ)は泥、クロロフィルa、水等の分光反射率を表し、Ciはその濃度あるいは質量を表す係数である。F(λ)は各主成分間の相互作用効果を表している。今後はこのF(λ)を明らかにし、この式を如何にして衛星画像に対応付けるかにつき研究を進める。
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