研究概要 |
廃棄物処分場内における有害化学物質(難分解性有機塩素化合物,重金属類)の挙動に腐植物質が深く関わっていることが近年多数報告させている.しかしながら,廃棄物の分解に伴って腐植物質がどのように生成し,消滅していくのか,その機構は明らかになっていない.埋立地内における化学物質のの長期的な動態を数値計算によって予測する上で,腐植物質の消長は極めて重要である.腐植物質の生成には4つの経路が存在するとされ(Stevenson, 1994),その一つが植物中のリグニンが微生物分解を経て腐植物質に至る経路である.埋立廃棄物中には木質廃棄物も多いことから,埋立地における腐植生成に木質系廃棄物のリグニン分解が寄与している可能性は十分考えられる.リグニンは難分解性の有機物であるが,コンポスト化反応の堆積後期に担子菌によって分解されると考えられている他,白色腐朽菌によってリグニンが分解を受けることは広く知られている.そこで,本研究では,有機物分解に伴う腐植生成としてリグニン由来の生成に着目し,白色腐朽菌を用いた木材の好気性分解試験を実施した.特に試料中有機炭素およびリグニンの腐植中炭素への転換率を把握することを試みた.具体的には,4種類の木材を対象に,白色腐朽菌を用いたバッチ実験を実施し,分解率,炭素収支を追跡した.試料とした木材は,4週間の実験期間で10%程度の分解率を示し,木材構成成分であるリグニンとセルロースの重量減少が顕著であった.しかしながら,フミン酸・フルボ酸いずれも顕著な増大傾向は確認されなかった.リグニンの分解経路には,酵素により低分子化する系と逆に高分子化する系が存在し,前者では低分子化後にベンゼン環の開裂を受けて菌体の代謝系に取り込まれるとされる(原口,1982).今回の実験では,低分子化の経路で代謝された結果,腐植の増大を確認し得なかったものと推察された.
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