イメージングプレート(IP)では、数ミリグレイ以上のX線照射により、消去不全現象が顕著に現われる。消去不全光の熱クエンチングにより、deep trapの存在が示唆され、消去されない読み取り信号が、短波長側(290nm付近)に深く捕獲された電子に由来することが示された。消去不全光を独自に構築した発光測定装置を用いて測定し、PSL(Photo-Stimulated Luminescence)発光であることを明らかにした。3種類の汎用されている市販IP(BAS-TR、BAS-MS及びST-VI)にエネルギーの異なる2種類のX線を照射することにより消去不全現象を生じさせ、その線量応答性について、600nm付近の電子を用いた読み取りにおける結果と比較した。その結果、線量に対してのリニアな関係、線量率依存性がない、IPの種類差への応答の違い、X線のエネルギー差へのほぼ2桁の応答の違いなど、いずれもそのdosimetry的特性は、600nm付近の電子を用いた読み取りと消去不全光の読み取りとで同じであることがわかった。ただし、感度はいずれのIPでも、消去不全光の方が低かった。これらにより、消去不全現象が生じる原因は、以下のように考えられた。IPに放射線があたると、電子は主に600nmをピークとする領域に捕獲されるが、同時に短波長側でも捕獲される。この特性は蛍光体本体のBaFBr(I) : Eu^<2+>とその工程に依存するので、両者は同じ線量応答性を示す。ただし、前者に比べて後者はきわめて感度が悪く、これは短波長側のトラップサイトの電子の捕獲断面積が小さいことを意味する。 UV光と白色蛍光灯とを同時照射する新消去法を市販消去器に適用し、その消去効果を調べた結果、消去不全光を未照射レベルまで消去することができ、その後の有意な浮き出しも観察されないことが示された。
|