研究概要 |
初年度の研究結果に基づき、ウラン廃棄物(使用済みNaF,汚染鋼材)に適したイオン液体を選定するため、各種塩化コリン系イオン液体を用いたウラン廃棄物の溶解試験を行った。その結果、塩化コリンと尿素を1:2で混合した共融混合物(イオン液体)を用いることで、NaF中のウラン(Na_3UO_2F_5の形態で存在)を効率的に溶解することができ、クリアランスレベル(IAEAノTECDOC855で提案されている0.3Bq/gを想定)以下にすることができる見通しを得た。 また、硝酸塩系廃棄物を想定し、硝酸コリン系イオン液体の調製を試みたが、処理にてきした共融混合物(イオン液体)を調製することができなかった。 さらに、塩化コリン・尿素系に溶解したウランの電気化学的挙動を調べるため、サイクリックボルタメントリー測定を80℃で行った。その結果、-1.0V(vs. Ag/AgCl)付近に比較的ブロードな還元波が、また対応する酸化波が0.5付近に観測されることがわかった。この還元波は、UO_2^<2+>のUO_2への還元と帰属された。 以上の試験結果に基づき、ウランをウラン酸化物(UO_2)として回収するため、陰極と陽極に炭素棒、参照電極にAg/AgCl電極を用い、80℃において約5時間、電解試験を行った。その結果、陰極表面に黒色の化合物が析出することがわかった。その析出物のXPS測定において、UO_2と推察されるピークが観測された。 以上の試験結果から、塩化コリン・尿素系イオン液体を媒体としてもちいることで、汚染ウラン成分の溶解と溶解したウランを電解還元により回収しうる見通しが得られた。 一方、塩化コリン系に存在するウランの化学形態について検討するため、NaF中のウラン成分を溶解したイオン液体の可視・紫外吸収スペクトルの測定を行った。その結果、UO_2Cl_4^<2->として存在することが明らかとなった。
|