研究概要 |
本研究の最終年度にあたる平成21年度の研究成果は下記の通り. 1.コンプトンスコープを構成するシンチレーターとして,散乱体と吸収体双方にNaI(Tl)シンチレーターを用いた場合の検出器の応答について,シミュレーションと実験で検証し,シンチレーター間隔を30cm以上確保することによりそれぞれのシンチレーターでの応答時間の違いを捉えることが可能であり,散乱-吸収の過程を同定できることが確認された. 2.4つの2インチNaI(Tl)シンチレーターを頂点に配置する正4面体(1辺50cm)のコンプトンスコープを構築し,シミュレーションと標準線源を用いた実験を行った.その結果,検出器は正常に動作し,散乱角(γ線入射方向)を導出できることが確認された.検出効率は散乱体としてプラスチックシンチレーター1個を用いた9結晶モデルに比べて2.3倍に向上した.角度分解能(平均値)はシミュレーションでは2.5°実験では5.4°となり,散乱角が大きくなる結晶配置の場合に角度分解が悪くなる傾向を示した.これは実機におけるエネルギー分解能の影響によるものと考えられた. 3.リアルタイム読み出しのためのFADCを用いた実験において,エネルギー損失ばかりでなく,パルスの立ち上がり時間をも同定することが可能となり,シンチレーター内イベントの時間差を利用した効率的なデータ収集にも対応可能であることを確認した. 以上,全方向有感型γ線探査のためのコンプトンスコープをNaI(Tl)シンチレーション検出器を用いて構築し,シミュレーションおよび実験によりその動作を検証した.4結晶モデルで散乱体・吸収体の区別を無くすることで装置の小型化を実現し同時に検出効率が向上した.データのリアルタイム読み出しについては,FADCを用いたデータ収集システムが有効でありことを実験的に確認した.
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