本研究は、高レベル廃棄物に含まれる多種類の放射毒性イオンを電気化学的に分別し、同時に化学的・熱的に安定な結晶性固化体に変換することにより、安全・効率的な高レベル廃棄物処理を実現しようとする新技術「電気分別固化法」の有効性の検証と、その実用への基礎固めを目的とする。 具体的な研究内容以下の二点である。1.高レベル廃棄物に含まれる放射性元素中、特に環境拡散性・放射毒性の高いアルカリ・アルカリ土類元素が混在する系に対して電気分別固化を試みる。電気分別固化法によるアルカリ・アルカリ土類の分離効率を評価する。2.電気分別固化法によって得られた固化体に対して、熱水条件下のリーチテスト(環境へのイオン漏洩度テスト)を行う。ガラス固化体に対するリーチテスト結果と比較することで、従来の高レベル廃棄物法に対する当該方法の優位性を検証する。 上記目標を達成するため、平成19年度は、アルカリ・アルカリ土類試薬の分解・吸湿を防ぐ「グローブボックス」を購入し、その立ち上げ作業を行った結果、現在までに、グローブボックス内酸素・水分濃度0.5ppm以下を実現した。グローブボックスを用い、セシウム・ストロンチウムを同時に含む混合酸化物を調整した。セシウム・ストロンチウム混合酸化物に対して電気分別固化を試みた結果、セシウムとストロンチウムを、それぞれのイオンを単独に含むチタン酸結晶体の形で、97%以上の高分離効率で単離できることが明らかになった。この成果は、電気分別固化法の有効性を端的に示しており、平成20年度の研究に重要な足場を与える。 上記成果に加え、平成19年度、熱水条件下リーチテスト用の高圧・高温セルを設計・作製した。この成果により、平成20年度において、電気分別固化により単離されたチタン酸結晶固化体に対するリーチテストを実行することが可能になった。
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