酸化チタンは高い屈折率を有するため、酸化チタン結晶化ガラスを透明機能材料として応用する際においては、屈折率の異なる母ガラスと析出する酸化チタン結晶との界面における光散乱を可能な限り低減する必要がある。一方、光触媒材料として結晶化ガラスを応用するためには、アナターゼとルチルの結晶相の析出形態を制御する必要がある。上記の必要性から、平成21年度において、研究者は、酸化チタン結晶子の析出形態の制御をおこなうことにより、結晶化ガラスの透明性および機能性の向上を検討した。まず、酸化ビスマスを含有しない無色透明な母ガラスを熱処理することにより、直径数nm程度の酸化チタンを析出させ、可視域で透過率70%以上を有する結晶化ガラスの創製に成功した。一方、組成検討をおこなった結果、酸化亜鉛を構成成分として含有することで、準安定相であるアナターゼが選択的に析出する傾向になることを明らかにした。さらに、酸化亜鉛量の増加に伴い、アナターゼが安定に析出し選択的な結晶化が達成できた。一方で、表面の化学処理により表面近傍の形態制御を試みた結果、両性酸化物の酸化亜鉛の含有量により酸およびアルカリを用いたエッチングレートが大きく異なることを見出した。加えて、表面近傍の結晶化を誘起する手法として、レーザー照射による結晶化および赤外炉を用いた結晶化手法を検討し、それらの手法を用いた材料作製をおこなった。これらの成果は、本研究の目的である透明光触媒材料の実現に際し、大きな一歩となった。本研究に関しては、多数の論文発表や学会発表をおこなうことにより、情報発信をおこなった。
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