研究概要 |
本研究の概要は以下のようにまとめられる。 1.シロイヌナズナ第3染色体ペリセントロメア末端領域におけるLys-tRNA合成酵素遺伝子の偽遺伝子化とそこに挿入されたレトロトランスポゾンの挿入年代の測定: 標記ヘテロクロマチン領域について、塩基配列の微細構造解析からLys-tRNA合成酵素遺伝子の「重複」がまず起こり、そこに多数のトランスポゾン、レトロトランスポゾンが挿入されてヘテロクロマチン化されたことが明らかになった(解析は大坪が担当)。さらにLys-tRNA合成酵素遺伝子と、「重複」したそのiso-遺伝子の分岐年代の推定から、両遺伝子の重複がアラビドプシスゲノムの大規模再編成と同時期(50〜75MYA)に起きたと推定された。倍加したiso-遺伝子の偽遺伝子化の年代計算から、iso-遺伝子は偽遺伝子化した後、トランスポゾンの度重なる挿入によってヘテロクロマチン化したと推定された。挿入されたレトロトランスポゾンの両LTR問の塩基置換数を測定し、塩基置換数を「レトロトランスポゾンの年齢」に置き換えるための分子時計の構築は、レトロトランスポゾンが挿入されたLys-tRNA合成酵素遺伝子の重複領域(iso-gene)における同義置換率に基づいて計算した。すなわち、重複元のLys-tRNA合成酵素遺伝子(パラログ)、トマトのLys-tRNA合成酵素遺伝子(オーソログ)の配列を外群とし、シロイヌナズナとトマトの分岐年代(112-156Myrs)を基準にして算出した(田村が分担)。 2.イネレトロトランスポゾン、RIRE7の発現とDNAメチル化の解析: RIRE7は低メチル化状態で発現が上昇するイネのレトロトランスポゾンで、イネ染色体セントロメア領域に局在することが報告されている。インド型と日本型系統間で多型をしめすRIRE7を塩基配列の比較によって同定、その隣接領域を対象として、RIRE7のLTR上およびその隣接配列のシトシンのメチル化部位とメチル化の種類(CG,CHG or CHH)を明らかにした。その結果からRIRE7挿入の有無によるその領域のメチル化のパターンの変化が明らかになった。
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