研究概要 |
本研究で対象としている生活史の異なる木本種2種(トチノキ,サワグルミ)について、集団解析に使用する目的で、オニグルミ属で開発されたマイクロサテライトマーカーの適用可能性について検討した。また、林床植物3種(エンレイソウ、オオバナノエンレイソウ)に関して、これまで個体にマーキング処理を施してある永久調査区において、個体の成長、生存、死亡に関わる継続追跡調査を行った。また、生活史パラメーターの変動が個体群の増加率に与える影響を評価する個体群増加率の感度や弾力性を用いる方法について検討が加えられ、生命表反応実験(LTRE)という手法を用いる解析をおこなった。 それらの研究の結果,オオバナノエンレイソウでは、自殖が集団内の生育段階構成や遺伝的構成に与える影響が明らかになった(裏面の「雑誌論文」の項参照)。また、サワグルミでは2遺伝子座について集団内の多型を検出可能なプライマーが得られた。そのプライマーを使った遺伝解析の結果を次年度にまとめる予定である.さらに、LTREという手法を用いることによって,トチノキ、サワグルミの集団の維持機構が明らかになった.(裏面の「雑誌論文」の項参照)。また、集団の絶滅確率を求めるシミュレーシヨンプログラムに用いるために、既存のセンサスデータの統計学的解析を行った。次年度には、上記のシミュレーションプログラムに手を加え、分散率が絶滅確率に与える影響の計算を行う予定である.現在これらの成果の一部が3本の論文、3回の学会発表において公表されている。
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