研究概要 |
平成21年度の研究成果は,年度当初計画の項目ごとに以下のようにまとめられる。 (1)空中写真を用いた最近27年間の森林限界の動態解析の対象区域を,前年度までの北斜面から西斜面に拡大して行った。解析途中であるが,斜面の方向や基質の違いが森林限界の安定性に影響することが示唆された。富士山全域での調査が望まれるが,他の斜面での調査は今後の課題として残された。森林限界上昇の過程と速度についてのこれまでの成果をまとめて国際生態学会議で発表した。 (2)詳しい積雪データとダケカンバ林のサイズ・齢構造の調査データを新たにとり,前年度までのデータにこれを加えて,森林限界植生の基本単位である半島状植生の樹種の齢空間構造と微地形・積雪パターンの関係を解析した。これにより一次遷移にともなう森林形成過程におけるパイオニア樹種(カラマツとダケカンバ)の位置と役割が明確になった。 (3)スコリア荒原に0.5haの調査区をおいて,植物の空間分布を調査し,カラマツやダケカンバの定着におけるミネヤナギパッチのナース植物効果が森林限界からの距離と関係することが明らかになった。 (4)樹木の生育への栄養塩制限についての継続調査では,N制限かP制限かについての標高に対する反応が樹種によって異なることが示唆され,今後の新たな研究課題が提起された。栄養塩制限に関するこれまでの成果は,国内の学会で発表した。 本年度で3年間の研究期間を終了した。個々の成果について投稿論文を準備しているが,3年間の成果を総合して,平成22年9月の国際シンポジウム(山梨)で報告する予定である。
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