研究概要 |
1.卵胎生魚類グッピーでは,地味な雄と配偶した雌と比べ,派手で魅力的な雄と配偶した雌の子は,性比が雄偏りになった(Karino & Sato, 2009)。この子の性比調節が雌親,雄親のいずれによって行われているか明らかにするため,雌と交尾させる配偶雄を,より派手な刺激雄,あるいはより地味な刺激雄と同時に雌に提示することで,配偶雄の相対的な魅力を操作した。そして,相対的に派手な役割,あるいは地味な役割として,配偶雄をそれぞれ異なる雌と配偶させ,それらの子の性比を比較した。もし,雄が子の性比を調節しているなら,相対的な魅力が異なっていても同一雄の子の性比には差がないと予測されるが,雌が子の性比を操作している場合,配偶雄の相対的な魅力に応じて,子の性比には差異が生じると考えられる。検証の結果,子の性比は配偶雄の相対的魅力に応じて,派手な役割の場合は雄偏り,地味な役割の場合は雌偏りとなり,子の性比調節は雌が行っていることが明らかになった。この結果をまとめた論文はEthology誌に受理された(Sato & Karino, 2010, in press)。 2.グッピーにおける子の性比調節の適応性を検証するため,子の性比と,その後成長した子の体サイズや性的魅力との関連について調査した。その結果,子の性比が雄偏りであった場合,息子の体サイズは大きくなり,性淘汰形質も派手になったのに比べ,子の性比が雌偏りであった場合は,息子は小さく地味であった。しかし,雌の繁殖効率の指標となる娘の体サイズに関しては,子の性比と関連が見られなかった。したがって,子の性比が雄偏りの場合は息子の適応度が高くなり,子の性比が雌偏りの場合は息子よりも娘の方が繁殖成功が高いと考えられ,グッピーにおける子の性比調節は適応的であることが判明した。この結果は論文としてまとめ,学術誌に投稿中である。
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