プレート境界に位置するため隆起・侵食が日本の中でもとりわけ速い丹沢山地において、地形と森林樹木の分布パターンの解析を行った。樹木の胸高断面積(BA)合計は、周囲より標高の高い尾根的な場所ほど、また傾斜が緩く土が厚いほど大きく、森林の局所的な発達パターンは地形上の位置による地表の撹乱強度の差異に強く規定されていることが明らかとなった。この傾向は大径木の分布が尾根筋に限定されることが要因の一つであり、大径木になり得るブナやモミの分布傾向である程度説明ができた。斜面下部ではフサザクラ、ミズキ等が優占する特徴的な植生がみられた。一方尾根直下からそうした谷植生の間の斜面の微地形構造と植生分布についてはさらなる調査解析が必要である。また流域によっては斜面下部にも大径木が分布することから、地域全体の傾向を把握するためには流域による地表の安定性の違いや侵食パターンの違いを考慮する必要があると考えられた。流域間および斜面の上下で渓流水の窒素濃度や土壌の窒素生成能力が異なり、またバイオマスやアロケーション、根系の形態などに関して樹種によって窒素施肥への反応性が異なることから、樹種の分布パターンには地表の安定性だけでなくそうした栄養条件の違いが反映されている可能性が示唆された。
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