丹沢西部の中川流域西沢集水域(306ha)に経緯度5秒間隔で調査枠を設定し、植生と土壌の調査を行った。またGISを用いてデジタル標高データから地形に関する変数群を抽出し、前者との関係を解析した。 10回以上出現した樹木29種の分布パターンを解析した結果、4種群に分けられ、標高傾度・尾根/谷傾度・撹乱傾度(傾斜と土壌厚さの傾度)の3軸で説明できることがわかった。丘陵地における既存研究では、これらの軸はほぼ平行しており、尾根・谷に分布中心を持つ2群のみが識別されたが、山地では尾根、谷それぞれに撹乱の影響が強い場所と弱い場所があるなど、3軸の独立性が比較的高いため、生息地および植生がより多様化していると考えられた。 樹木地上部現存量(地上バイオマス)は、尾根・緩斜面で高くなる傾向にあった。これはブナなどの大径木がそうした安定立地に局在するためである。しかし例えばバイオマス一位のブナの大径木は大きな尾根、二位のモミの大径木は小さな尾根、三位のクマシデは地表の凹凸と無関係に分布するなど、樹種によって地形への応答パターンが異なっていた。そのため全体の傾向がぼやけ、地上バイオマスの地形依存性は有意だが低かった。 今後、レーザー測量データを用いてより詳しい解析を行い、また現地に設置したイオン交換樹脂を回収して土壌機能に関して分析を進める予定である。
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