神奈川県丹沢山地においてLiDARによって得られた計測結果を用いて林冠高を表現する10m×10mのDegital Canopy Model(DCM)を作成し、地形構造との対応について解析した。その結果、林冠高は尾根部・緩傾斜地で低くなり、谷部・急傾斜地で高くなることが示された。これは樹木の胸高断面積(BA)の分布と逆の傾向である。またBAと林冠高では対応する地形スケール(起伏量を評価する空間面積)が異なることも示された。これらの結果は、現地調査から得られたBAのみによる地上部のバイオマス量の推定の不確実性を意味し、森林の3次元構造に及ぼす地形の影響について様々なスケールでの検討が必要なことが示された。 南アルプスの亜高山帯渓流域で、高木群落の樹木の分布パターンと微地形との対応を検討した。調査の結果、山腹斜面、谷壁斜面、デブリ、テラス、低位斜面、谷底面の微地形単位が識別された。山地渓畔域に比べ、種多様性が低く、植生の配列も単純であることが分かった。プロット調査とベルトトランセクト調査により、洪水撹乱の影響を受けにくい微地形単位には亜高山性針葉樹が分布し、洪水撹乱の影響を受けやすい微地形単位にはオオバヤナギ、ヤハズハンノキが分布すること等を明らかにした。亜高山帯渓畔域は山地渓畔域に比べて植生配列が単純で種多様性も低く、いわゆる渓畔種と呼べるものはオオバヤナギのみであることがわかった。
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