研究課題/領域番号 |
19570018
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
河村 功一 三重大学, 大学院・生物資源学研究科, 准教授 (80372035)
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研究分担者 |
古丸 明 三重大学, 大学院・生物資源学研究科, 教授 (10293804)
米倉 竜次 岐阜県河川環境研究所, 主任研究員 (40455514)
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キーワード | 外来種の定着成功 / 遺伝的分化と形態分化 / Fst-Qst解析 / 適応放散 / ブルーギル / 分子進化 / 自然選択 / 遺伝的多様性 |
研究概要 |
ブルーギルの生息地間における遺伝的分化と形態分化の関係を明らかにするため、侵入年度の異なる4集団を用い、マイクロサテライトマーカーを用いた遺伝子分析と相対成長による集団解析を行った。その結果、形態分化と中立マーカーから見た遺伝的分化の間には正の相関があるものの両者は直線的な関係ではなく、形態分化は遺伝的分化よりも大きい傾向が認められた。相対成長における雌雄差は環境の不安定な生息地において大きく、またその表現分散は雄の方が大きく、ブルーギルの密度との間に正の相関が存在する事が考えられた。これらの事から各生息地におけるブルーギルの形態分化は遺伝的浮動と自然選択により生じるものの、後者の影響が大きい可能性が示唆された。 異なる水温環境への局所適応は、外来生物の分布拡大や個体群増加に影響を与える要因である。遺伝的特徴の異なる6集団のブルーギル親魚から、全父半兄弟デザインにより計120家系(各集団につき、オス5個体×メス4個体=計20家系)を作出した。産卵時における水温の上限(30℃)と下限(20℃)の各条件下で受精卵と仔魚の生残率を調べ、水温の違いの影響の程度を量的遺伝解析により検証した。異なる水温に対する生残率は、集団毎に異なった。リアクション・ノルム(異なる温度に対する適応能力)を調べたところ、1960年に日本に最初に導入された一碧湖では、水温の違いによる生残率の差異は小さかったのに対して、導入時期が比較的新しい他の集団では、30℃に比べ20℃における生残率はかなり低かった。この事から、侵入年度が新しい集団の多くにおいては、受精卵から仔魚にかけて低水温に対する生残適応能力が消失している可能性が考えられた。この集団間における違いが自然選択による適応進化あるいは遺伝的浮動による中立進化のいずれの要因によるものであるかについては今後、追従実験を行う事により検証する予定である。
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