研究概要 |
本研究課題の目的は,スクミリンゴガイで発見された著しい性比変動が,少数の性決定遺伝子によって生じているという仮説を検証し,その遺伝様式の特定を行うことである。スクミリンゴガイは南米原産の淡水巻貝で,アジア各地で稲をはじめとする水生植物に大きな被害をもたらしている。本研究では,スクミリンゴガイにおける少数遺伝子による性決定を遺伝学的手法により検証し,性決定機構および性比変動を詳細に解析する。得られる成果は,少数遺伝子による性決定機構と性比変動に関する最も詳細な基礎研究になり,また,応用的には性決定機構を利用したスクミリンゴガイ防除への道が開けることが期待される。 そのために,平成19年度は,2つの小課題に沿って研究を進めた。 1.掛け合わせ実験:野外で採集したスクミリンゴガイの未成熟個体を雌雄のペアにして飼育し,交配させた。その子供(F1)の性比を調べたところ,統計的に有意に雄に偏っている家系から雌に偏っている家系まで,さまざまな性比をもった約30家系が得られた。現在,各F1の姉妹を成熟まで飼育中である。成熟後,各家系内で共通の雄と掛け合わせ,F2の性比を調べる予定である。 2.DNAマーカーの開発と連鎖解析:近縁種で知られているマイクロサテライト部位を参考に,スクミリンゴガイでマイクロサテライト領域の探索を行ったところ,2つのマイクロサテライト領域が検出できた。この領域に対するマーカーを調べたところ,再現性に優れ,実用的であることが示唆された。また,これらのマーカーだけでは数が不足しているため,スクミリンゴガイのゲノムDNAライブラリーを作成し,マイクロサテライト配列を含むクローンの選択に着手した。
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