研究概要 |
本研究課題の目的は,スクミリンゴガイで発見された著しい性比変動が,少数の性決定遺伝子によって生じているという仮説を検証し,その遺伝様式の特定を行うことである。スクミリンゴガイは南米原産の淡水巻貝で,アジア各地で稲をはじめとする水生植物に大きな被害をもたらしている。本研究では,スクミリンゴガイにおける少数遺伝子による性決定を遺伝学的手法により検証し,性決定機構および性比変動を詳細に解析する。得られる成果は,少数遺伝子による性決定機構と性比変動に関する最も詳細な基礎研究になり,また,応用的には性決定機構を利用したスクミリンゴガイ防除への道が開けることが期待される。 そのために,平成20年度は2つの小課題に沿って研究を進めた。 1.掛け合わせ実験:F2の性比を調べた。野外採集個体に由来する各家系のF1から4-6個体程度の雌(全きょうだいの関係にある姉妹)を選んで同一の雄と交配・産卵させ,孵化貝を飼育して性比を決定した。この結果,母親が全きょうだいの関係にあるF2の貝の性比は,予測通りいくつかの離散的な値をとった。この結果は,少数遺伝子による性決定を強く示唆する。 2.DNAマーカーの開発と連鎖解析:近縁種で知られているマイクロサテライト部位を参考に,スクミリンゴガイでマイクロサテライト領域の探索を行ったところ,3つのマーカーが得られた。また,ゲノムDNAライブラリーからのマイクロサテライト配列を含むクローンの選択をすすめ,1つの新規マーカーが開発できた。これらのマーカーの多型性やメンデル遺伝との整合性などをチェックし,利用可能であることを確かめた。
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