研究概要 |
本研究課題の目的は,スクミリンゴガイで発見された著しい性比変動が,少数の性決定遺伝子によって生じているという仮説を検証し,その遺伝様式の特定を行うことである。そのために,遺伝学的手法を用いて少数遺伝子による性決定を検証し,性決定機構および性比変動を詳細に解析する。平成21年度は2つの小課題に沿って研究を進めた。 1. 掛け合わせ実験:熊本県熊本市のレンコン田からスクミリンゴガイを採集し,未成熟の個体からペアで飼育し,産卵させた。各ペアから孵化した個体(F1)について4-6個体の雄(全兄弟;full sib)をランダムに選び出し,同一の雌と交配・産卵させた。その孵化貝(F2)を飼育して性比を調べる実験に着手した。しかし,F2で飼育個体の大量死があり,初めから実験をやり直したため,現在までにF2を得るには至っていない。今後も飼育を継続する。 2. DNAマーカーの開発と連鎖解析:Hamiltonら(2002)の方法を改良し、効率的にマイクロサテライト領域を含むDNA断片をクローン化する方法を開発した。この方法により現在までに44のDNA断片を取得し、マイクロサテライト領域(CAA, CAGリピート)を増幅するプライマーのデザインを完了している。これらのプライマーを今後利用し、スクミリンゴガイの親子間での検定を行い、性染色体マーカーとして利用できる領域を選別する。さらにマイクロサテライト領域を含むDNA断片のクローン化を継続し、精度の向上を図る。 なお、本プロジェクトで開発した方法は非常に簡便であるため,他の生物種についても応用が期待される。
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