2008年6月、及び9月の淡青丸航海(KT-08-13、KT-08-23)と2008年6月のみらい航海(MR-08-02:西部熱帯太平洋)で、3種の外洋棲ウミアメンボを定量サンプリングし、またみらい航海では航海中に温度麻痺実験を行い、ウミアメンボ個体の高温による麻痺温度を求めた。 外洋棲ウミアメンボは、「海流に乗って様々な海域を渡り歩く旅人アメンボ」と「一定の場所に留まる定住型アメンボ」に分かれるという仮説が成り立つ。今年度の調査結果を照らし合わせると、6月の黒潮上(高知沖から房総沖)では採取されたのは殆どがコガタウミアメンボ(コガタ:小型種)成虫とツヤウミアメンボ(ツヤ:大型種)幼虫であったが、黒潮から外れた土佐湾内(9月)では採取されたのは殆どがセンタウミアメンボ(センタ:中型種)であった。2006年、2007年の淡青丸航海でも、8-9月の夏季に黒潮上で最も多く採取されたのはコガタであった。このように黒潮上の「旅人アメンボ」の多くはコガタではないかと考えられる。本種の多種と比較しての高い高温耐性はこのことを支持する。翻って、北赤道海流上(北緯17-12度)での27回に及ぶサンプリングの結果、ツヤは約1300頭、センタは約400頭、コガタは約300頭採取された。従って熱帯域を東から西へ流れる北赤道海流を乗って移動する「旅人アメンボ」のうち多くはツヤが占めると考えられる。コガタは、北赤道海流と黒潮に乗って西部太平洋を大きく循環する「旅人」かもしれない。 MR-08-02では北緯12度、東経135度の定点観測で採取されたツヤ成虫の麻痺温度を求めた。台風が発生し、天候や海況が悪化した後半の10日間に採取されたツヤは、比較的好天に恵まれた前半に採取されたものより、高温耐性が低かった。その原因として以下の3点が考えられる。1.台風発生に伴う、気温の低下(25℃以下を記録した回数が前半5回、後半10回)のストレス;2.台風発生に伴う波浪による物理的衝撃;3.台風発生に伴う、まとまった降水による浸透圧低下。
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