1 アリの種子運搬中の種子紛失による種子散布効果 オオズアリはコニシキソウの種子運搬中に頻繁に広範囲で種子を紛失した。その結果、種子が集中分布することは少なく、それらの種子から発芽した実生の生存率が高まる事が判明した。一方、トビイロシワアリは種子運搬中に種子を紛失することは少なく、紛朱する範囲も狭かった。しかし、食害率が低いため、アリの巣口の周囲に多くの実生がみられ、種子散布に貢献していた。 2 ムラサキシジミ幼虫の寄生蜂に対するアリによる防御効果 アリがムラサキシジミ幼虫に随伴しない場合、寄生蜂Cotesia inductaは、1齢から5齢まですべての発育ステージのムラサキシジミ幼虫に寄生が可能であるが、雌蜂は、おもに2齢から4齢幼虫に産卵することが判明した。一方、野外ではムラサキシジミ幼虫の齢期の進行とともにアリ随伴率が高まった。したがって、齢期の進んだ幼虫の高いアリ随伴率は、寄生蜂に対する高い防御効果をもたらすことが示唆された。 3 アカメガシワの被食防御におけるアリの役割 アカメガシワの被食に対して、複数の防御形質を持ち、物理的防御、化学的防御および生物的防御を行う。人為的被食処理を行うと、花外蜜分泌が誘導されるが、物理的防御や化学的防御は誘導されないことが判明した。また、アリが随伴することでも花外蜜分泌が誘導されるが、被食による誘導よりも花外蜜分泌量が少ないことが判明した。人為的被食により誘導された花外蜜とアリ随伴により誘導された花外蜜に対するアリの選好性に違いはみられなかった。したがって、アカメガシワは被食やアリの存在に応じた効率のよい花外蜜分泌を行っていることが判明した。
|