研究概要 |
平成19年度は,琵琶湖およびその集水域から,代表的なカワニナ類6種13個体群について,それぞれ約15個体の母貝から稚貝を得て,Genarchopsis goppo卵(琵琶湖北部産ヌマチチブから採集)の感染実験を行った.現在までの結果では,感受性の差は宿主の種レベルで明らかであり,地理的な違いは検出されていない.このことから,琵琶湖の地域によって見られる感染率の差は,宿主側の耐性の差ではなく,寄生虫側の遺伝的差異による可能性が高くなった. また,平成19年度は宿主および寄生虫のPCR適正条件を検討し,方法および解析に用いるゲノム部位を決定して,予備的な塩基配列解析を行った.その結果,宿主・寄生者の両方とも,遺伝的差異は地理的な距離よりも形態種の方に関連していることが明らかになった.また寄生虫の湖沼型(Genarchopsis gigi型)と河川型(G. goppo型)は別種であることが明らかになり,感染実験の結果と合わせると,前者は琵琶湖固有種であると考えられた 以上の実績をふまえ,本年度は,琵琶湖水系の他地域のGenarchopsis goppoを用いた感染実験を集中的に行い,寄生虫側の宿主特異性に地域間差があるかどうかを明らかにする.また,昨年蓄積した宿主・寄生虫両者サンプルの遺伝的解析を行い,個体群ごとの変異量を定量的に求めると共に,遺伝的変異の種・地域個体群間差を明らかにし,寄生虫の感染力および宿主の耐性との関連の有無について検討する予定である.
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