研究概要 |
平成20年度は,昨年度の琵琶湖ヌマチチブ由来のGenarchopsis goppoに加えて,河川カワヨシノボリ由来のG. goppo(形態では区別できないが,遺伝的に別種と考えられる)の感染実験を行い,両者は宿主特異性が異なることを確認した.この結果から,G. goppo(隠蔽種含む)の感染に限り,宿主側の遺伝的多様性のレベルと感染耐性のレベルには一義的な相関はないと推定された.また,宿主である琵琶湖産カワニナ類のITS-1塩基配列の解読により,琵琶湖固有カワニナ類の遺伝的変異には地理的変異がほとんど見られないことがわかった.感染実験の結果と合わせ, Genarchopsis goppo感染への耐性は寄生者・宿主の双方の系統的制約によるところが大きいと推定され,個体群間差は無視できるほどであることがわかった. さらに,琵琶湖産カワニナ類の塩基配列解析の際に,雑種と推定されるヘテロ配列をもつ個体がかなり高い確率で見出された.このことは,宿主側の系統および遺伝的多様性の正確な記述のためには,核DNAの1本毎の塩基配列の決定が必要であり,mtDNAは繁殖集団や系統の推定には使えないことを示す.本年度は,サブクローニングによって2組のDNA塩基配列をそれぞれ明らかにし,個体群ごとに平均ヘテロ接合度を求めるとともに,雑種の存在を考慮して宿主の系統推定を行い,宿主の遺伝的多様性および系統と感染体制との関連の有無を明瞭に示す予定である.
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