研究概要 |
生物多様性と種間相互作用が生態系の安定性や生産性などの機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的に4つの研究を行い、以下に示すような成果を得た。 1.植食者と多数の植物種からなる2栄養段階生物群集モデルで、植食者が1種の場合よりも2種の場合の方が、植物が被る植食圧が均等化するために共存できる植物の種数が増える場合があることや、植物の種間競争が強くなるほど植物と植食者の生物量が減って生産性は下がるが、多様性は高くなる場合があることなどを明らかにした。 2.シカなどの有蹄類による植食と植物の種間競争を考慮した3種モデルで、防御コストのためにうまい草がまずい草との競争に弱くうまい草の種内競争が弱いときに系が不安定化し、有蹄類の個体数の急増と崩壊を含むirruptionと呼ばれる現象を説明できることを明らかにした。また、この系にオオカミなどの捕食者を導入するとirruptionとその後のうまい草の激減を避けられることも明らかになった。 3.捕食と消費型の競争を含むギルド内捕食の3種系と,さらに消費者を1種加えた4種系を調べ、資源からギルド内捕食者への直接経路と間接経路の相対的エネルギー効率が系の動態に大きな影響を及ぼし、直接経路の効率が低いときには種の絶滅は起こらないが、これが極端に低くなるとカオスのような複雑な振動が起こることを明らかにした。 4.生態系の安定性への空間的不均一性の影響を調べるために、2つの食う食われる関係によって生じる間接競争である、消費型競争と見かけの競争のメタ群集モデルを解析した。個体群のパッチ間移動がないときには、劣位の競争種は2つのパッチのどちらにおいても絶滅するという意味でパッチがシンクになっているとき、間接競争のメカニズムによらず、優位な競争種の移動率が高く劣位の競争種の移動率が低いときに、2種が共存できることを明らかにした。
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