研究概要 |
高地(標高2250m)の低気温環境に生育するイタドリと低地(標高100m)イタドリの個葉光合成を比較した結果、高標高イタドリの光合成最適温度が低いことが、前年度に明らかになっている。、本年度はこのデータを用いて、イタドリの個葉光合成の数値シミュレーション解析を行い、葉内のCO2拡散コンダクタンスが小さい場合や、葉内にCO2固定酵素ルビスコが多い場合、光合成の最適温度が低下しうることを示すことができた。実際の高標高イタドリで、光合成の最適温度を低くしている機構を探るため、既報のホレンソウのルビスコの酵素化学的パラメータ(CO2と02への親和性およびそれぞれの最大反応速度)を用いてモデル解析を行ったが、ホウレンソウのパラメータはイタドリの解析には適用できないことが確認された。本年度は、イタドリのルビスコの酵素化学的パラメータを精度よく決定するための実験を進め、パラメータの温度依存性を正確に測定する準備が完了した。これまでに得られた予備的な測定から、イタドリのルビスコは、ホウレンソウのルビスコに比べCO2への親和性が大幅に大きい可能性が示された。また、研究計画に示したとおり、本年度はイタドリを人工気象室内で栽培し温度順化実験を行った。その結果、高地のイタドリの種子を25℃(L)/20℃(D)で生育させると、光合成の最適温度が低地のイタドリと同等にまで上昇する傾向を確認することができた。さらに、本研究課題を通じて取得することのできた光合成能力の把握技術や数値シミュレーション技術を適用した研究成果の一部は、Bekku et al.(2009)および別宮(坂田)有紀子,坂田剛(2009)に発表を行った。
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